後壁心筋梗塞の心電図

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)が緊急疾患であることは周知のことです。

STEMIでは対側変化(reciprocal change, ミラーイメージ)と言ってST上昇の誘導と反対側に、鏡のようにST低下を認めることがあり、ST上昇を判読しにくくてもST低下をヒントに上昇している誘導を見つけることもあります。

ST上昇の誘導は分かりますか?

ところで、12誘導心電図は心臓の全ての方向を記録しているわけでは無いため、必ずしも全てのST上昇を捉えられるわけではありません。

1つ心電図を用意しました。

こちらはV1-4でST低下を認めます。

ST上昇している誘導は無さそうです。

しかし、これはSTEMIと考えても問題ありません。

なぜならば背部誘導(V7-9)でST上昇しており、その対側変化としてV1-4でST低下しているからです。

右下3つの誘導(V7-9)でST上昇を認める

純粋な後壁心筋梗塞の場合、ST上昇する誘導は背中側だけなので通常の12誘導心電図では見つけられません。

ガイドラインでは、V1-4のST低下を認めた場合に背部誘導の記録を考慮しても良いとあります。

急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)より

日本光電やフクダ電子の心電図システムでは既存の12誘導心電図から背部誘導や右側胸部誘導を計算して描出するシステムもあるため、これらも参考になると思います(先程の心電図は日本光電の導出18誘導心電図です)。

慣れれば、ST上昇の“裏返し”と思って12誘導から後壁梗塞を見つけます。

背部誘導を記録すれば確定的ですが、現実的に難しい場面もあるでしょう。

循環器内科医は12誘導心電図を与えられたら、心エコーで後壁の壁運動低下を確認して採血結果を待つこと無く心カテに向かうでしょう。

もちろん、心エコーでの壁運動異常の判断は専門的な内容ですので、胸痛とV1-4のST低下を認めればコンサルトして下さい。

最後にもう一つ心電図を紹介します。

これは後壁のST上昇の対側変化でV1-4でST低下を認めるだけで無く、異常Q波の裏返しとしてV1-4のR波が高くなっています。

もう分かりますね?後壁心筋梗塞です。

 

その他の心電図関連の記事はこちら。

参考

急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)

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