軽症の心不全入院では尿量測定は不要かもしれない

心不全で入院!利尿剤注射!となると何となく尿測もセットで行いたくなりますし、実際ルーチンで行われる事はあるでしょう。

しかし、その尿測は本当に必要でしょうか。

自覚症状が強くて動けなかったり、CCU/ICUに入るほどの重症例で尿バルーンが入っているなら、ついでに計測出来ます。

しかし例えばトイレ歩行くらいは可能で、酸素2L、ドブタミン2γ、フロセミド静注を定期打ちする程度の心不全ならば、必ずしも尿測は不要ではないかもしれません。

尿測のデメリット

尿バルーンによるトラブル

特に高齢者の男性は前立腺肥大症が多いため、刺激で浮腫んでしまい、バルーン抜去後に尿閉で困ることがしばしばあります。

落ち着くまで間欠的な導尿が必要です。

(余談ですが、ここで再びバルーンを突っ込む人もいますが、多分いつまで経っても帰れなくなります)

導尿を行うようになると管理も指導も煩わしくなり、心不全が良くなってもすぐに帰られなくなります。

高齢者の男性には出来る限り尿バルーンは避けたいのです。

もちろん男女関係なく異物留置は感染リスクを高めますから、不要ならば避けるべきです。

正確性や手間の問題

尿バルーンが無い場合は尿瓶やシリンダーに溜めて計測したり、オムツの重量変化から測ることも可能ですが、本人やスタッフが気付かずに捨てていたら正確ではなくなります。

そして捨てた分を適当に計算して~とやっていくとドンドン数値はズレていきますし、捨てたことを忘れて正確に測定しているつもりだと治療のミスリードに繋がるかも知れません。

そもそも容器に溜めて計測することは不潔で手間も多いので、出来れば避けたいのです。

体重測定だけでも何とかなる

尿以外の水分IN-OUTバランス、特に不感蒸泄はカウントできないので、特定の数値だけ厳密に追い掛けても全体を見失います。

しばしばICUの重症例では、直近の水分バランスのみに着目して、イーブンバランスだと思ってたら実は長期的に見ると体重は減っていた(増えていた)などのズレを感じます。

水分バランスの管理だけでは限界があります。

カウントできないOUTを含めて全部のバランスを見るのは、やはり体重測定です。

もちろん食事や排便などの要因で多少上限しますから、体重だけを指標に細かすぎる管理をすることも裏目があります。

自覚症状や胸部X線なども組み合わせて、体重の多少の上下はあるが数日単位で見ると減少傾向だから順調と判断するなど、全体を大雑把に見据える必要があります。

切羽詰まっていない心不全ならば、連日治療を弄り倒すのではなく、『抗菌薬を使用して3日後に有効性を判定』くらいの長いスパンで考えても良いのです。

実際、一気に利尿剤で引きすぎても間質から血管内への移動が追いつかなかったり、血圧が下がったり

フロセミド静注の反応性はどう判断するか

一般床レベルの心不全なら患者に「おしっこ沢山出ましたか?」と聞きます。

結構出た、と言われればそれでOKです。

尿測が無くても良いと考えているのは猶予のある患者ですから、客観的な評価は翌日以降の検査や体重から判断します。

一般床でも尿測することもある

尿バルーンによるトラブル、尿測の正確性やスタッフの手間などから、私は基本的には一般床で見る心不全は体重測定での管理を考えます。

ただしCCUを要するほどで無くとも自覚症状が強い場合は尿バルーンを入れますし、その場合はついでに尿測もします。

腎機能も悪くて、既に結構な利尿剤の内服もある場合、初回の静注薬の反応性を確認したいので短期間だけ計測もあり得ます。

もちろん病状次第です。

とはいえ必要性を考えずにルーチンで心不全=尿測は良くないと考えています。

まとめ

軽症ならば体重測定だけでも十分治療できます。

外来のみで治療が完結する人は、もちろん尿量は測らないわけですから、入院でも軽症の場合に尿測は必須ではありません。

必要性を考えることで、余計な情報に惑わされず、スタッフの負担を減らすことも出来るかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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