不整脈専門医がいない施設でのアブレーション治療

私は不整脈専門医では無いものの、循環器内科医としての嗜みとして多少のアブレーションの勉強はしています。

今の勤務先は不整脈専門医がいないためクライオが使えず、手頃なPafも高周波で治療しています。

不整脈専門じゃない人ほどクライオの方が良い気がするのですが、自分は高周波が好きなので、これはこれで良い気もしています。

クライオよりも高周波が好きなら不整脈専門医とれば?と言われることもありましたが、今は施設的に厳しい状況であることと、心室頻拍など経験が乏しい領域もあるので取得は目指していません。

途中、医局人事の都合でアブレーションが出来ない施設でブランクもあったのですが、今も何とかアブレーションを続けられるのは、若い頃に沢山経験を積ませてもらったおかげです。

数年空いた久しぶりのアブレーションの前には、さすがにシミュレータで操作だけ確認しましたが、意外と問題なく出来るものです。

若い時の自分、ありがとう。

異動先の病院で「不整脈は苦手です」と宣言するほど毛嫌いしていたのに、毎週アブレーションを予定して、時には心房細動を一日に2件積んでいた当時の自分の覚悟は、今ではちょっと真似できません。

始めた直後の20件くらいはカテ操作にもかなり時間が掛かっていたので、当時の上司やスタッフにも感謝です。

100件越える頃にはカテ操作もかなり安定して、おかげ様で少しは役立つ循環器内科医になれました。

先日も持続性心房細動でぼってり大きな左房の肺静脈隔離(PVI)でしたが、穿刺から2時間くらいで終われました。

これは特にサブスペシャリティがない場末の循環器内科医には、ちょっとした自信がつく要素です。

もちろん早く終わるのは両側ともfirst pass isolationなど調子が良かった時のため、なかなか焼き切れない場合やBOXなど追加焼灼する場合はもっとかかりますが。

ただ、単純なPVIでこれくらいのスピード感があるなら、クライオのためだけに遠方の病院に紹介せずとも、当院で高周波で治療を受けてもらえれば良いかな、と思っています。

クライオでもしばしばタッチアップは必要なので、結局アブカテの操作が不十分ならば治療に臨めないですし。

Qdotの90W4秒通電が使えればクライオ並みに早く終わることも夢では無いですが、アブレーションの件数が多くない当院では買って貰えないと思います泣

 

さて、アブレーションを習得して大きく変わったのは、不整脈に対する治療戦略。

未成熟だった専攻医時代と比べて、Ⅰ群抗不整脈薬を常用させることは基本的になくなり、抗不整脈薬の処方は全体的にかなり減りました。

例えば心房細動に漫然とピルシカイニドを出し続けても、発作を完全にコントロールしきれなかったり、そのうち高齢になって脱水→急性腎障害→中毒になって搬送される危険があります。

若い患者にはアブレーションでの根治を勧めますし、高齢者には副作用の観点から抗不整脈薬を使いにくいので結局元気そうならアブレーションを勧めます。

80歳以上だとしても、例えば心房粗動で発作による受診頻度が多く毎回カルジオバージョンで止めるような人はQOLも大分落ちますし、近いうちに心不全で困るかも知れません。

こういう時にアブレーションの手技自体に抵抗がなく、根治が簡単そうか難しそうかの予想が出来るだけでも大きなメリットでした。

心房細動を合併した心不全も、アブレーションでの根治が可能かを考え、“アブレーションまでの繋ぎ”を意識して治療します。

ハイボリュームセンターで全てを不整脈専門医に回せる場合はともかく、場末の循環器内科医にとっては手広く出来ることが良い診療に繋がると信じています。

ほとんどカテ操作をするだけなので、電気生理の専門家からすると“アブレーションをしている”とは言えない代物かもしれませんが、今後も精進していきます。

でも今の施設は不整脈専門医が不在で有り、難症例は最初から他施設に送るよう線引きはするつもりです。

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